2025.04.28

 横浜国⽴⼤学 総合学術高等研究院「革新と共創のための人工知能研究ユニット」の内⽥絢⽃IMS助教、同ユニット主任研究者⽩川真⼀教授、横浜国立大学/株式会社スキルアップNeXtの斉藤翔汰氏、横浜国立大学の渡邉陽平氏らと、株式会社サイバーエージェント⼈⼯知能技術の研究開発組織「AI Lab」との共著論⽂が、進化計算分野の国際会議「GECCO 2025」において、Full Paperとして1本、Posterとして1本採択されました。「GECCO」は世界中の研究者によって毎年開催される国際会議で、最適化における重要領域である進化計算分野において権威ある国際会議の⼀つです。この度採択された論⽂は、2025年7⽉に開催される「GECCO 2025」にて発表を⾏います(スペインのマラガにおいて、オフラインとオンラインのハイブリッド開催を予定)。 なお、株式会社サイバーエージェントとの共著論文の「GECCO」への採択は4年連続となります。

GECCO : The Genetic and Evolutionary Computation Conference
GECCO2025 |https://gecco-2025.sigevo.org/HomePage

 また、本共著論文以外にも「革新と共創のための人工知能研究ユニット」の研究者の論文がFull Paperとして3本、Posterとして1本採択されています。

研究背景:ブラックボックス最適化法の高度化

 「革新と共創のための人工知能研究ユニット」は、革新・共創的な研究につながる人工知能技術を目指して、基礎から応用まで幅広い研究に取り組んでいます。その中で、幅広い最適化問題に適用可能なブラックボックス最適化法である進化計算法の高度化や高性能化に取り組んでいます。また、民間企業との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取り組んでいます。株式会社サイバーエージェントに関連する応用であるクリエイティブ制作においては、より魅力的なデザインを学習するために、デザインに影響を与える変数の最適化が重要となります。例えば、グラフィックデザインを支援するためのレイアウト自動生成においては、最初に自動生成したレイアウトに対して最適化を行うことで、望ましいレイアウトの生成を実現しています。最終的な成果物の品質を高めるためには、最適化の精度を向上させることが重要となります。
 レイアウト自動生成における最適化アプローチとして、有望な進化計算法の1つであるCMA-ES (Covariance Matrix Adaptation Evolution Strategy) が注目されてきました。しかし、CMA-ESは連続的な変数のみを最適化対象としているため、離散的な変数を効率的に扱うことができないという課題がありました。このような背景のもと、これまで「革新と共創のための人工知能研究ユニット」と「AI Lab」では連続的な変数と離散的な変数を同時にかつ効率的に最適化するCMA-ESの開発に取り組んでまいりました。

Full Paperとして採択された共著論文について

『CatCMA with Margin: Stochastic Optimization for Continuous, Integer, and Categorical Variables』

著者:濱野椋希(サイバーエージェント AI Lab)、野村将寛(サイバーエージェント AI Lab)、⻫藤翔汰(横浜国⽴⼤学・株式会社スキルアップ NeXt)、内⽥絢⽃(横浜国⽴⼤学)、⽩川真⼀(横浜国⽴⼤学)

 本研究では、連続変数、整数変数、カテゴリ変数の3種類の変数を効率的に同時最適化する手法を提案しています。例として整数変数はフォントサイズやオブジェクトの数を、カテゴリ変数はフォントの種類などを決定する離散的な変数ですが、これらは性質が異なるため、同時に最適化可能な手法は限られていました。提案手法は、CMA-ESの連続最適化性能を活かしつつ、整数変数とカテゴリ変数を効率的に最適化することができます。これにより、これまで最適化が困難であった問題への本手法の応用が期待されます。

【論文リンク】
[2504.07884] CatCMA with Margin: Stochastic Optimization for Continuous, Integer, and Categorical Variables

今後の展開

 本研究において提案された方法は、クリエイティブ領域以外にも、機械学習モデルの自動チューニングやゲームバランスの自動調整などにも応用が可能です。「革新と共創のための人工知能研究ユニット」では、今後も革新・共創的研究を目指し、人工知能関連技術の研究開発に努めてまいります。

問い合わせ先

総合学術高等研究院「革新と共創のための人工知能研究ユニット」
IMS助教  内⽥ 絢⽃
メールアドレス: uchida-kento-fz (at) ynu.ac.jp
※(at)は@に置き換えて下さい。