2024.09.12

横浜国⽴⼤学 総合学術研究院「革新と共創のための人工知能研究ユニット」の内⽥絢⽃助教、同ユニット⽩川真⼀教授ならびに横浜国⽴⼤学/株式会社スキルアップNeXtの⻫藤翔汰⽒は、株式会社サイバーエージェント⼈⼯知能技術の研究開発組織「AI Lab」との共著論⽂2報について、進化計算分野の国際会議「PPSN 2024」※1の本会議に採択されました。
「PPSN」は世界中の研究者によって2年ごとに開催される国際会議で、最適化における重要領域である進化計算分野において権威ある国際会議の一つです。この度採択された論文は、2024年9月にオーストリア・ハーゲンベルクにて開催される「PPSN 2024」にて発表を行います。

研究背景:ブラックボックス最適化法の高度化

「革新と共創のための人工知能研究ユニット」は、革新・共創的な研究につながる人工知能技術を目指して、基礎から応用まで幅広い研究に取り組んでいます。その中で、幅広い最適化問題に適用可能なブラックボックス最適化法、とりわけ確率モデルに基づく進化計算法の高度化や高性能化に取り組んでいます。有望な進化計算法のひとつであるCMA-ES (Covariance Matrix Adaptation Evolution Strategy) は、連続的な変数のみを最適化対象としているため、離散的な変数を効率的に扱うことができないという課題がありました。例えば、グラフィックデザインを支援するためのレイアウト自動生成における最適化では、離散的な変数を効率的に最適化することが求められます。このような背景のもと、これまで「革新と共創のための人工知能研究ユニット」とAILabでは、連続的な変数と離散的な変数を同時にかつ効率的に最適化するCMA-ESの開発に取り組んでまいりました※2。そしてこのたび採択された論文では、新たなタイプの離散変数に対応可能なCMA-ESとCMA-ESに関する理論的な知見について発表しています。

採択された2本の共著論文について

CMA-ES for Discrete and Mixed-Variable Optimization on Sets of Points
著者:内田絢斗(横浜国立大学)、濱野椋希(サイバーエージェントAI Lab)、野村将寛(サイバーエージェントAI Lab)、斉藤翔汰(横浜国立大学・株式会社スキルアップNeXt)、 白川真一(横浜国立大学)

 レイアウトの最適化問題では、オブジェクトの配置位置を複数の候補から選択することが求められます。本研究では、連続的な変数に加え、そのような配置位置の集合を変数に含む場合でも効率的に最適化が可能なCMA-ESを提案しました。
<論文リンク> https://arxiv.org/abs/2408.13046

Natural Gradient Interpretation of Rank-One Update in CMA-ES
著者:濱野椋希(サイバーエージェントAI Lab)、 白川真一(横浜国立大学)、野村将寛(サイバーエージェントAI Lab)

 近年、進化計算法を理論的な観点から再解釈するための研究が行われており、手法の信頼性や拡張性を保証することが可能になっています。本研究では、CMA-ESの一部の更新方法に対して、自然勾配の枠組みから新たな解釈を与えました。
<論文リンク> https://arxiv.org/abs/2406.16506

今後

 CMA-ESは(株)サイバーエージェントが扱うクリエイティブ領域以外にも応用が可能であり、本研究において提案された方法も機械学習モデルの自動チューニングなどの様々な問題に対して応用が期待されます。「革新と共創のための人工知能研究ユニット」では、今後も革新・共創的研究を目指し、人工知能関連技術の研究開発に努めてまいります。

※1  「PPSN」Parallel Problem Solving From Nature
※2  進化計算分野のトップカンファレンス「GECCO 2024」にて 株式会社サイバーエージェントとの2報の共著論⽂採択