李坤朋IAS助教(先進化学エネルギー研究センターグリーン水素研究ラボ)
研究者プロフィール
・氏名:李 坤朋(Li Kunpeng)
・先端科学高等研究院での所属と役職・役割:先進化学エネルギー研究センター グリーン水素研究ラボ IAS助教
・主な研究分野:水素に関わる電解技術および燃料電池の研究開発
李坤朋IAS助教は、中国山東大学で修士号を取得後、2014年に留学生として来日しました。語学学校と東京大学で言語・研究の経験を積んだ後、2017年に横浜国立大学で機械分野の博士後期課程に進学し、2021年に博士号を取得しました。その後、先端科学高等研究院先進化学エネルギー研究センターのグリーン水素研究ラボに在籍し研究活動に取り組んでいます。
李坤朋IAS助教は、修士課程まで機械振動についての研究を専門としていましたが、中国で海外留学が盛んだった2010年代、海外での学術環境を目指し留学を決意しました。機械工学の分野で国際的に高く評価されている日本で博士課程に進学することを選び、横浜国立大学の工学府システム統合工学専攻の門を叩きました。機械工学分野以外にも新エネルギー分野に触れる機会を経験したことで、燃料電池の研究分野に夢中となり、その後に研究分野を転換しました。私達は従来の化石燃料から新エネルギーへの転換の時代に突入しています。李坤朋IAS助教は自身の研究を通じて、新エネルギーの開発と利用に少しでも貢献したいと語ります。
質問:IASの研究環境と雰囲気についての感想を聞かせてください
研究室においては自身の意見を積極的に述べることが奨励され、間違っていても非難や反論の対象になることはありません。研究室の指導教員(PI)は、ありきたりな予想を超えたアイデアを歓迎します。こうした予期せぬ、見過ごされがちなアイデアが、新しい研究の端緒となり、多くの重要な発見が生まれる源となります。そうした理由から、研究室ではリラックスした雰囲気を醸し出し、全員が自分のアイデアを積極的に提案し、多様な意見を取り入れることを奨励しています。将来、私が自分の研究室を立ち上げる際にも、このような研究室文化を受け継ぎたいと考えています。
質問:今後の日本生活について、特に期待していることは何ですか
私にはずっと前からやりたいことがありました。それは、計画を立てずに日本全国を旅することです。以前から自転車で知らない場所を走り回ることが好きでしたが、今はバイクを持っており、そのバイクで全国を旅する夢を抱いています。
その第一の理由は、日本の景色が美しいからです。また、私は計画のない旅行が好きで、未知の場所に行くと、突然目の前に広がる美しい風景や、絶壁の道路などに出くわし、非常に爽快な気分を味わえることも理由の一つです。
これは、研究活動においてまだ誰も見つけていないものを発見したときの満足感、または誰かが既に行なった実験かもしれないけれど、自分にとっては新しいものだと思えるものを見つけたときの満足感に非常に似ています。
質問:今までの人生について、100点満点で自己評価するとしたら、何点だと思いますか
現在の仕事における自己満足度は100点満点で90点です。しかし、私の人生の目標に対する満足感は30点から40点程度です。例えば、航空母艦を建造することに例えれば、航空母艦を造る仕事に対する満足感は90点ですが、全体の目標に対してはまだ一部しか完成しておらず、30点から40点しか達成していないということです。
総合的に言えば、60点から70点程度でしょうか。
質問:今後の人生目標について教えてください
研究者としての私の目標は、自身の知識を活用して社会に役立つ実用的な製品を開発することです。
また、教育上の目標は、学生が自分のアイデアを積極的に発信でき、たとえ間違っても非難されたり反論されたりしない雰囲気の研究室を築くことです。私はこれまでにさまざまな研究室に在籍した経験があり、多様な研究室文化に触れてきました。現在の研究室に来なければ、伝統的で厳格な指導者になることを目指していたかもしれません。現在の研究室文化を受け継ぎ、誰からも相談しやすい指導者として、リラックスした雰囲気でも科学研究はできることを世界に発信していきたいと考えています。
地域貢献における目標は、これまでに学んだ知識を活かし、農村地域の振興を支援して農村の発展に寄与することです。農村地域では穀物の藁などが随所に見られ、これらは何億年もの歳月をかけて石炭に変化できる資源であり、エネルギー源として潜在的な可能性を秘めています。豊富な太陽光エネルギーの存在も考慮に入れれば、これらのエネルギー源を効率的に活用することで農村地域におけるエネルギーの自給自足が実現する可能性が高まり、エネルギーの中間輸送に伴うエネルギー・ロスが削減されます。これが私の目指したいと思っている姿です。
そして日中交流としての目標は、日本のみなさんに中国のことをより深く知ってもらうためにできる限りの努力を惜しまないことです。アニメを代表とする日本文化が中国に広まることで、ますます多くの中国人が日本へ留学し、中国では日本に対する理解が深まっています。一方で、日本側は中国に深く触れる機会が多く残されていると感じています。両国間のさらなる友好的な交流促進のため、私は日本のみなさんが中国についてより理解を深めてもらうことに貢献したいと思っています。実は今できることから既に始めており、研究室に入った当初から、毎週の例会で中国に関する情報を紹介しています。これにより、少しずつでも中国について関心を持ち、もっと知りたいと思うきっかけを作りたいです。実際に中国を訪れることも勧めています。以前、研究室の同僚がヨーロッパへの旅行を計画した際に、私は上海経由のフライトを提案しました。数時間の滞在でしたが上海の雰囲気を楽しむことができ、彼らが大変喜んでくれたことを聞いた時、私は自分の努力が日中友好に多少なりとも意味のあるものであったことに達成感を感じました。こうした活動が更なる相互理解を深め、両国の友情を深める手助けとなるでしょう。